第七夜

まだまだ。ながいねー。
皆さん飽きてらっしゃるでしょう。
でも続けます。

第十二回受賞作  霧舎巧 『ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ』

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社文庫)
題名ナガイ。
先日紹介した島田荘司氏がペンネームの名付け親だという霧舎巧氏。ということで、これはもちろん本格です。




本格の場合、あまり人物は描かれず、基本的に登場人物はミステリというエンターテイメントを形作るための「駒」程度の役割(表現悪いかしら)しか果たしていないのが昔の流れでした。
先日も書いたように「本格」というジャンルがあるわけですから、その枠に当てはまる一定のパターンがあります。 それに対して私のように安心感を持つ読者もいます。が一方で、それに飽きてしまう読者、さらにはそれを毛嫌いする読者もいます。(かつての私はコレでしたが、今は前者2つの要素が半々くらいですねー)
そこで後者のような読者に対応するため、新しい「本格」が誕生します。その先駆けとなったのが綾辻行人らによる「新本格ブーム」だそうです。(だそうです、という伝聞調なのはリアルタイムで体感していないから) 具体的には、メタ的に、ミステリを批判的に見直した。そのうえで「本格」を書いたということでしょう。
で、最初の話に戻って。それとは逆に、登場人物の「キャラ」を立てることで、新しい「本格」を作ろうという流れを、最近ひしひしと感じます。というのも、その流れが特にメフィスト賞で顕著に見られるように、私が思うからです。6作くらいがそれに該当するかな。 ですがもちろんすべてが成功している訳ではない。むしろ失敗の方が多い。 6作のうち成功例といえるのは2作でしょう。
失敗例を挙げますと、昨日紹介の高里椎奈『銀の檻を…』。 キモイ。と書いたのは、キャラが私の好みにひどく合わなかったから。 もちろんそういうのが好きな人もいるんでしょうが。 キモイ。
で、少数の成功例のひとつがこの霧舎巧ドッペルゲンガー宮 …』
まぁ、キャラどうこう以前に、本格として上質なのですがね。さすが島田氏推薦。
良いですよ。「館」だし。
9点。